
業務を効率化するためにIT化したいから安い業者を探してって部長に言われたんだけど、システムを作ってもらうための費用っていくらが高いとか安いとかよくわかんない…。
ピンキリだからいろんなところに聞いてみたほうがいいよ。


業者によってそんなに価格が違うものなの?
うん、だって業者ごとに適当に決めてるからね(笑)


適当…??そんなことあるのー?
システム開発費用が適当。
そんなことあるのでしょうか?
あります。適当です。
前置き
システム導入には、パッケージ製品やクラウドサービスもありますが、今回は受託開発、つまりお客さんの要望通りのシステムを作るケースとします。
また、作ったシステム(ソフトウェア)はハードウェア(パソコンやサーバやクラウド等)にのせて動かすことになりますが、ここではハードウェアの費用は除き、純粋にソフトウェアのみを対象とします。
最後に、開発手法や見積手法によって異なりますが、今回は昔からある見積方法で、おそらく現在でも一番多い費用の算出の方法を書いていきます。
システム開発の作業内容
システム開発は決まった工程(フェーズ)によって進行されます。
手法は様々あり、時代と共に進化したり、主流なモデルも変わっていきますが、おそらく現在でも一番多いであろうパターンだと以下の作業があります。
もちろん例外はありますし、会社やプロジェクトによって若干異なることがありますが、大体は一緒です。
1.要件定義
2.外部設計
3.内部設計
4.プログラミング
5.単体テスト
6.結合テスト
7.総合テスト
8.導入・移行
9.保守
10.プロジェクト管理(進捗や品質を管理)
はい、経験者以外はよくわからないですよね(笑)
わからなくて大丈夫です。
よくわからないけど、なんだかやることがたくさんあるんだな…とだけ覚えておいてください。
システム開発費用の考え方
では実際に「このシステムを作るのにいくらかかるのか」というのはどうやって決まるのでしょう?
小売りと違っていくらで仕入れたモノをいくらで売る、というわけではありません。
システムはプログラミングすることによって作成されます。
そうです、ソフトウェアには「仕入れ」がありません。
”無”の状態からエンジニアが書き上げるので、仕入れなんて概念はありません。
前述の内容でシステム屋さんの作業がたくさんあることはわかっていただけたと思います。
つまり、システム開発にかかるお金は「どれくらいの作業時間がかかるか」で算出されます。
「どれくらいの作業時間がかかるか」を「工数」と言い、「1人で作業した場合に何日かかるか」という意味の「人日」という単位で表します。
工数が4人日の作業は1人でやると4日、2人でやると2日かかるということです。
同じ考え方で「人月」や「人時」もありますが、「基本的には1人で作業するとどれくらいかかるのか」で費用が算出されます。
また、「単金」と呼ばれる概念があります。
例えば、要件定義は1人日6万円、テストは1人日4万円のように作業毎に金額が設定されています。
会社やプロジェクトのルールによって設定金額は異なり、ケースは色々ありますが、大きな考え方は一緒です。
この2つの要素からシステム開発費を算出します。
システムの金額=「工数」×「単金」
ではこれらを踏まえて「適当」である根拠をお話します。
適当なところ1 「工数」の算出
適当なところ1 「工数」の算出
「工数」は作業時間であると前述しました。
作業時間で見積って理不尽だと思いませんか?
作業が早い人と遅い人で出てくる工数が変わってくるんですよ。
弁護士費用や引っ越し費用等、作業時間に比例して費用が増えるものはほかにもたくさんありますが、システム開発はかかる時間が膨大なので、差が顕著に表れます。
そうならないために、過去の実績からこれくらいの機能ならこれくらいの工数、と会社やプロジェクト毎にルールが定められていることが多いです。もうこの時点で適当ですよね。
そもそも、どれくらいかかるかなんてハッキリ言って全然わかりません。
細かい仕様を決めて、どうやってプログラミングするかまでを考えれば「これくらいかな?」というのは想像できます。
しかし、受注して工程を進めていくことで、やっと可能なのことであり、まずは受注のために見積を出すところからはじめる必要があるのでお客さんから簡単にやりたいことをさらっと聞いただけの薄っぺらい情報だけで見積をすることになります。
もうジレンマですね。
しかも、以下の記事で書いたように、実際にプログラミングするのは下請け企業が多いです。
見積をする人は元請けのプログラミングをしない人たちが多いです。
なおさらどれくらいかかるかなんて全然わかりません。
そりゃ、適当にもなりますよね。
適当にやるしかないんです。
適当なところ2 「単金」の設定
適当なところ2 「単金」の設定
要件定義は1人日6万円、テストは1人日4万円のように作業毎に金額が設定されています。
会社やプロジェクトのルールで決まっているのです。
では、この設定金額はどうやって決めるのでしょう?
答えは「適当」です。
1日あたりいくら稼ぎたいかで設定することが多いでしょう。
売上目標から逆算して設定されていることがほとんどだと思います。
この金額も会社やプロジェクトによってはだいぶ差があります。
完全に言い値ですね。
大手であればあるほど、人件費や固定費が高いので必然的に単金も高くなります。
よく弁護士相談で30分5000円等ありますが、せいぜい1時間とか2時間程度ですよね。
システム開発の工数は弁護士相談時間の何百倍、何千倍も時間はかかりますので、おそろしい金額になることは想像できると思います。
システム開発費用は適当で高い
ここまでで、システムを作るための費用がいかに適当であり、高額であるかをわかっていただけたでしょうか?
適当であるがゆえに、IT化やシステム刷新を考えている方は注意が必要です。
最適なサービスとそれに見合った価格の業者を探すのは簡単なことではありませんが、何もわからないからといって業者に丸投げすることほど、危険なことはありません。
コストカットのためのIT導入が逆に首を絞めている可能性もあります。
本来の目的はITを導入することではなく、ITを導入することによって結果的に利益向上させることです。
莫大な投資をして導入したは良いけど、使う人が使いこなせなかったり、いつまでたっても回収に至らなかったりと失敗するケースも少なくありません。
最後に
最後に、これからIT化やシステム刷新を考えている企業の担当者様へアドバイスです。
見積を業者に依頼すると、予算感を聞かれることがあると思いますが、あえて伝えないことも視野に入れておいた方が良いです。
予算を提示すると予算に合わせた金額で設定されます。
私も業者側の立場からすると、予算感のないお客様の費用見積もりは困りました。
いくらに設定すれば良いのか、検討がつかないからです。
お客様の立場で考えると、その業者の本当の見積基準を知るためにはアリだと思っています。
提示する場合でも、大きく幅をもたせる等の工夫をオススメします。
予算感を伝えずに複数の業者への見積をすると業者によってだいぶ差があることがわかると思います。
以上、最後までご覧いただきありがとうございました。