新しく出会う人との名刺交換は社会人の慣例であり、マナーでもあります。
名刺切れはビジネスマナーとして避けるべきとされていますが、IT業界、特にSES(システムエンジニアリングサービス)においては、これが「あえて」行われることがあります。
本記事では、このSESの闇について掘り下げ、なぜ名刺切れがIT業界の「あるある」となっているのか、その背景と問題点を探ります。
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SESの闇?名刺切れ?あえて名刺切れを演出しなければならないそもそもの要因は又貸し
IT業界は多重下請け構造になっていることがほとんどで、2次請けどころか3次請けや4次請けなこともざらにあります。
システム開発を受注したのはいいものリソースが足りなかったり、対応できるスキルをもった要員がいない場合には外注することになります。
また、手っ取り早く利益を出すには外注することが一番です。
100万円で受注した仕事を70万円で外注できれば差分の30万円は何もしなくても生まれる利益になります。
リーダーだけ自社社員でメンバーは外注なんてこともめずらしくありません。
(参考)過去にIT業界の多重下請け構造の闇を以下の記事で紹介しています。
お客様はどこぞの知らない会社よりも有名なベンダーに頼む方が安心のため、メーカー系のベンダーなど、大手の企業にお仕事を依頼することが多いです。
当然、お客様はプロジェクトに登場してくる開発者のことは発注した大手の社員だと思っています。
しかし、実際に元請けの大手の社員はプロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーくらいで実際の開発者は下請け会社のメンバーで構成されていて、外注先の人数の方が人数比率が高いということも良くあります。
大手から下請けに出そうが、その下請けがそのまた下請けに出そうが、お客様から見えているのは大手の会社だけです。
図でも見てわかる通り、二次請け会社はほとんど何もしてないですね。
大手から人を貸してほしいと言われて、三次請け会社から借りた人を又貸ししているだけです。
昔、友達にゲームソフトを貸して、さらに別の友達に又貸しされて喧嘩したことある人もいるのではないでしょうか?
又貸しってあまり良い印象ないですよね。
これが名刺を出せない理由です。
SESの闇?名刺切れ?名刺を出すと現場は混乱する
三次請けの会社の人が一次請けの会社で作業をすることは良くあることです。
三次請けの会社の人が又貸しされて一次請けの会社のメンバーとしてお客様との打ち合わせに同席する場合もありますが、最初にすることはお客様との名刺交換だと思います。
でも、素直に三次請けの会社の自分の名刺を出してしまうと、お客様からみると「え?だれ?」となってしまいますよね。
それだけならともかく、下手すると一次請けの大手企業の方にも「え?だれ?」と思われてしまいます。
一次請けの会社が仕事を依頼しているのはあくまで二次請けの会社です。もしその人が三次請けの存在を知らないとびっくりするでしょう。
つまり、三次請け会社は、大手に対しては「二次請け会社」で、お客様に対しては「一次請け会社」である必要があるのです。
自分の会社名は微塵も出てきません。自分が何者なのか、いつどこでどの立場としてふるまえばいいのかわからなくなることもあります。
これが、名刺を出すわけにいかない理由となります。
SESの闇?名刺切れ?実際の名刺交換の雰囲気
実際の名刺交換の現場はこんな感じです。
「〇〇会社の△△と申します。」(名刺を差し出される)
「すみません、あいにく名刺を切らしておりまして…〇〇と申します。」
このように、一方的に名刺を受け取ってご挨拶します。
失礼だし、マナー違反ですよね。
普通ならたまたま本当に名刺が切れていた場合は
「すみません、あいにく名刺を切らしておりまして…〇〇と申します。名刺は次回お渡しさせていただければと思います。」
と謝罪をして、後日会った時に「先日はお渡しできずに失礼いたしました。」と言って差し出すのがビジネスマナーです。
しかし、下請け会社の社員はこれをすることができません。
何度お会いしようと出せないものは出せないのです。
はじめてお会いするときよりも2回目の方がどう振舞っていいのか難しいです。
しれっとするしかないんですけどね。
SESの闇?名刺切れ?名刺を出すべきか、出さないべきか
困るのが「名刺を出して良いのか、出さない方が良いのかわからないとき」です。
下請け会社であることを先方が知っているケースもあるのでその場合は問題ありません。
では、わからないときはどうすれば良いと思いますか?
そう、聞きます。
一次請けの社員に確認します。
しかし、聞いても「わからない」と言われるケースも多いです。
契約時にどの下請け会社の誰を使っているのかという申告はしているものの、契約を取り交わす偉い人しかその事実を知らず、実際の現場の担当者は何も知らないことがあります。
この場合は本当に三次請けの会社の人間だということは知らないので、聞いてもわかるわけないですよね。
どうしていいのかわからないときは、無難に出さないでおくという選択になってしまいます。
SESの闇?名刺切れ?名刺交換しないだけではなく、知らない会社の情報も聞かれる
名刺交換以外にも、日常の会話の中でも困るときがたくさんあります。
・〇〇さんの部署って何人くらいいるんですか?
・最近業績どうですか?
・△△課の□□さんお元気ですか?
・今年〇〇さんのチームに新人入ります?
いやいや、そこの社員じゃないからわかりません(笑)
そんなときは「うーん、どうなんでしょうね」とかごまかして話題チェンジしたり、その場を立ち去ったりと、逃げることに必死です。
割と下請けのITエンジニアあるあるだと思います。
SESの闇?名刺切れ?一次請けの会社の名刺をもらうケースもある
しょっちゅうお客様と会う機会があったり、長い契約を結んでいてしばらく大手企業で作業をする場合は、自分の名前をいれてもらった大手の名刺をもらうことがあります。
つまり、完全に一次請けの大手社員になりきるのです。
ただの嘘ですし、コンプラ的にも問題ありますが、事実存在しています。
以下の記事で偽装請負の闇について説明していますが、
基本的に元請けは下請けに指示を出したりすることはできません。
派遣契約だと問題ありませんが、請負やSESでこれをやってしまうと偽装請負となります。
自社の名刺を渡してそれを配るように指示することは「偽装請負していることのアピール」でしかありません。
実際に大手の社名の名刺に自分の名前が入るので、なんとなく大手に入ったような気分にはなれますけどね(笑)
SESの闇?名刺切れ?解決策!SESとわかる専用の名刺がほしい
「〇〇会社提携先」とか「△△会社パートナー」の肩書を入れて、下請けであることが一目瞭然になる名刺がほしいですね。
これがあれば解決する気がします。
まあ、元請け会社が多重請負であることをきちんとお客様に伝えてもらうのが前提になりますが。
プロジェクトメンバー全員下請け企業で本当に大手の社員なのはリーダーだけということなんてザラですからね。
闇ですね、本当。
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いかがでしたでしょうか?
エンジニアは好きでマナー違反しているわけではありません。
そうせざるを得ないのです。これも多重下請け構造ゆえの闇です。
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